「インナーチャイルド」という言葉は、心理学用語ではありません。
けれども近年、心の癒しやセラピーの分野でよく使われるようになりました。
ここでは、公認心理師として5,800件以上の臨床経験をもつ石川美樹が、
“癒すだけでは終わらない”インナーチャイルドの本質と改善法についてお伝えします。
「インナーチャイルド」という言葉は、正式な心理学用語ではありません。
もともとは「内なる子ども」という意味で、子どもの頃に傷ついた記憶が、大人になった私たちの行動に影響を与えていることを指す言葉として広まりました。
たとえば、小さな子どもが不器用に大人を困らせてしまうように、過去の心の傷が大人の私たちの行動や選択を左右してしまうことがあります。
この「今の行動への影響」こそが、インナーチャイルドを理解するうえでとても重要なポイントなのです。
私はインナーチャイルドを、ヒーリングやスピリチュアルの視点ではなく、心理学や脳科学をベースにした独自のメソッドでアプローチしています。
多くの方は「傷ついた記憶を癒せば、自然と行動も変わるはず」と考えますが、実際にはそう単純ではありません。
私がこれまで5,800件以上のセッションを行う中で気づいたのは、 本当に大きな影響を与えているのは“記憶そのもの”ではなく、そこから生まれた《心のクセ》だということです。
この「心のクセ」とは、過去の痛みを避けるために無意識に作られた思考や行動のパターンです。
心理学的には「認知のゆがみ」とも呼ばれますが、私は「クセ」と表現した方が分かりやすく、誰にでもある自然なものとして受けとめやすいと考えています。
たとえば、
「どうせ私はダメだから挑戦しても失敗する」
「人に嫌われないように、本音は言わないほうがいい」
こうした心のクセは、幼少期の経験、特に養育者と言われる親や学校の先生のネガティブな言葉や態度から生まれ、自分の中で、痛みを避けるためのビリーフ(信念)となり、無意識に大人になった今も行動を制限してしまいます。
だからこそ、インナーチャイルドを扱うときは 「過去の記憶」だけでなく、「そこから作られた今の心のクセ」まで解きほぐすことが大切なのです。
インナーチャイルドは、心の中に残っている子どもの記憶や感情を指します。 一方でアダルトチルドレンは、その影響を抱えたまま大人になった人(状態)を表す言葉です。
もともとはアルコール依存症の親のもとで育った子どもを指す専門用語でしたが、現在では 親子関係や幼少期の心の傷が大人の行動に影響している状態を広く指す意味でも使われています。
📺 もっと詳しく知りたい方は、このコラムの下にある動画でも解説しています。
多くのインナーチャイルドワークでは、幼少期の「傷ついた記憶」を特定して癒すことが中心になります。
もちろん、それはとても大切なプロセスです。けれども――
「あのとき癒されたはずなのに、また同じことで苦しくなってしまう…」
そんな経験をした方は少なくありません。
実際、クライアントの なみさん もそうでした。
以前、インナーチャイルドセラピーを受けたとき、ワンワン泣いてワンワン怒って、その場では本当にスッキリしたそうです。
けれども、それは一時的なもので、数日経つとまた元の自分に戻ってしまう。
「これって、実際に変化しているって言えるの?意味がないんじゃないのかな…」
そう疑問を感じて、私のセッションに来られました。
このように、過去の感情を解放するだけでは行動は変わらない のです。
本当の課題は「出来事そのもの」ではなく、その経験から作られた 心のクセ(=認知の歪み) にあります。
石川メソッドでは、
記憶によって生まれた“無意識のブレーキ”
身体に刻まれた“感情の記憶(身体記憶)”
にアプローチし、 行動や選択が変わるところまで を「癒し」と考えています。
「頭では『やらなきゃ』と思っているのに、なぜか体が動かない…」
「本当は言いたいことがあるのに、口が固まってしまう…」
そんな経験はありませんか?
多くの人が「意志が弱いから」と自分を責めてしまいますが、実はそうではありません。
・意識:自分で考え、選んで行動できる部分。
例:コップを取りたいと思い、手を伸ばして取る。
・無意識:考えるよりも先に自動的に反応してしまう部分。
例:熱いものに触って手を引っ込める、心臓が鼓動する。
また「話したいのに体が固まって声が出ない」などもここに含まれます。
この 無意識の領域に、インナーチャイルドの“心のブレーキ”が潜んでいる のです。
子どもの頃の傷ついた経験や、親や先生からの厳しい言葉が、無意識の反応として刷り込まれます。
その結果、大人になった今も「気づかないうちに行動や選択を制限してしまう」状態が続くのです。
表面的な気合いや努力だけでは解決できません。
無意識の中にあるブレーキに気づき、そこにアプローチしていくことが本当の変化につながる のです。
👉では、この“心のブレーキ”は本当に悪者なのでしょうか?
実は、一見マイナスにしか見えないそのブレーキには、あなたを守ろうとするプラスの側面もあるのです。
「どうして私は人の輪に入れないんだろう」「なぜ夫の前で言いたいことが言えないんだろう」──そんな自分を責めてしまうことはありませんか?
でも実は、その“心のブレーキ”は あなたを守ろうとする働き でもあるのです。
たとえば…
人の輪に入れないとき、無意識は「入ったら嫌われるかもしれないよ。嫌われないように外にいよう」と、あなたを守ろうとしている。
夫の言動に縮こまって声が出ないとき、無意識は「小さい頃、意見を言うと怒られたでしょ。言わなければ怒られないよ」と、あなたを守ろうとしている。
つまりブレーキは、【嫌われない】【怒られない】という安心を守るために働いているのです。
けれど、その安心を守る代わりに、孤独感や劣等感といった新たな痛みを抱え、ますます自分を縛ってしまう──これが“心のクセ(認知の歪み)”の仕組みです。
「もうこんな失敗はしたくない」
「今度こそ変わろう」と思っても、なぜか同じパターンを繰り返してしまう…。
そんな経験はありませんか?
これは意志が弱いからではなく、無意識に刷り込まれた心のパターンが働いているのです。
小さな子どもにとって、親や養育者、先生は「絶対的な存在」です。
その存在から受けた言葉や態度は、強い影響力を持ちます。
厳しいしつけ
「黙っていなさい」という否定
期待に応えられず責められる体験
孤独や無視される経験
子どもは未熟な心で「どうすれば生き延びられるか?」を必死に考え、痛みを避けるための行動パターンを作り出します。
その行動パターンを何度も繰り返すうちに、脳は学習して神経回路を強化します。
それは「熱いものに触ったら反射的に手を引っ込める」のと同じくらい自然に、自動的に働くようになってしまうのです。
こうして「怒られないために黙る」「嫌われないために輪に入らない」といった反応が、無意識の領域に刷り込まれるのです。
大人になった今も、その刷り込まれた反応は生き続けています。
頭では「大丈夫」と分かっていても、体が勝手に反応してしまう。
それが、インナーチャイルドの記憶が無意識に影響を与えているということなのです。
インナーチャイルドを癒すゴールは、過去の痛みをなくすことではありません。
本当に大切なのは「心の全体性」を取り戻すこと。心理学では自己受容とも呼ばれます。
私が「こころのホールネス」と呼んでいるのは、強さも弱さも、喜びも悲しみも、ポジティブもネガティブも、すべてを包み込める“丸ごとの心”のことです。
ホールネスの状態になると、
弱さを否定せずに受け入れられる
困難があっても立ち直れるしなやかさが育つ
「このままの自分でいい」と安心できる
こうした安心感としなやかさが、幸せな人生を送るための土台になるのです。
たとえば、多くの人は「弱い自分なんて嫌だ」と思い、強い自分ばかりを求めすぎてしまいます。
でも結局、誰にも甘えられずに潰れてしまったり、孤独を深めてしまうことも少なくありません。
弱さを「ダメな部分」とみなすのではなく、「成長できる大切な一部」と受け止められるようになると、安心して人に頼れたり、自分をもっと好きになれたりします。
こうした変化こそが、インナーチャイルドを癒した先に待っている「こころのホールネス」なのです。
インナーチャイルドの癒しを「気持ちが楽になった」で終わらせず、
実際の行動や生き方の変化 につなげるのが、石川式メソッドの特徴です。
私のメソッドでは、以下の5つのステップを大切にしています。
変わりたいと思っても、ゴールのイメージに痛みや不安が含まれていると、無意識はそこへ向かおうとしません。
👉 例えば、「頑張り続けないと価値がない」という思い込みが残ったまま未来を描いても、心はブレーキをかけてしまいます。
安心できる未来ゴールを設定することで、自然にそこへ進む力が働き始めます。
子どもの頃の傷ついた体験は、「痛みを避けるための行動パターン」として心に残ります。そのパターンが、今のあなたの行動に無意識のブレーキをかけているのです。
👉 例えば、幼い頃に「うるさい!黙っていなさい」と言われ続けた人は、大人になっても会議で発言できずに黙り込んでしまうことがあります。
ここが石川式メソッドの最大の特徴です。
多くのセラピーは「過去の記憶や感情を癒す」で終わりがちですが、石川式ではさらに、無意識に刻まれた“心のクセ”や“身体記憶”に直接アプローチします。
👉 例えば、「どうせ怒られる」と体がこわばる反応を解除することで、安心して自分の意見を伝えられるようになります。
エラーが解除されると、「私はこうあるべき」という思い込みから解放されます。そこから そのままの私 を取り戻し、自然に新しい行動を選べるようになります。
👉 例えば、嫌われないように合わせてばかりだった人が、「私は私で大丈夫」と感じられ、穏やかに自分の意見を伝えられるようになるなどです。
最後のステップでは、困難や苦しい出来事があっても、揺るがない安心感の中で「私は大丈夫」と思える状態にたどり着きます。
それが こころのホールネス――強さも弱さも、喜びも悲しみもすべてを包み込み、そのままの自分に自信を持てる心 です。
👉 例えば、失敗しても「それも私の一部」と受け入れ、前に進める。孤独を感じても「私は一人じゃない」と思える。そんなしなやかな自分に戻れるのです。
多くのインナーチャイルドセラピーは、過去の記憶を癒して「終わり」になってしまいます。
でも本当の目的は違います。
インナーチャイルドを癒すのは、“過去の私”のためではなく、“今の私”と“未来の私”のため。
だからこそ、ここから先の一歩が大切なのです。
🌱 ステップ1:
まず自分の傾向を知りたい方に
人気、2万人が受けた診断テスト。
あなたの心のクセや傾向を、やさしく読み解きます。
「インナーチャイルド診断」では、5つの選択肢から、
あなたの思考パターンに近いものを一つ選んでクリックすると、
診断結果と解説のメールが3分以内にお手元に届きます。
※外部サイトに接続します。
🌱 ステップ2:
生きづらさの理由を知りたい方に
心理学と脳科学の観点から「なぜ変化が起きるのか」を体系的に学べる動画講座。
理解を深めることで、体験セッションの効果がぐんと高まります。あなたのこころのクセ、陥りやすい感情、行動パターンなど、なぜそうなるのかを理解することができます。
🌱 ステップ3:
じっくり深く変化したい方に
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あなたがセラピーを受けても癒されなかった原因を7つのタイプに分けて解説。